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国内に眠るという6兆円のLGBT市場は本当に存在するのか?

国内に眠るという6兆円のLGBT市場は本当に存在するのか?

世界のビジネス界から期待と注目を一身に集める「LGBT市場」。
その市場規模は、推計でアメリカ約77兆円、イギリス約7兆円、日本国内では約6兆円と言われ、世界では約100兆円を超える規模とみられている。

では、本当に日本には6兆円のLGBT市場があるのか。

簡単に言うと、これは、既存市場の中に消費者の性別が分析しきれていない市場が6兆円あったということを意味しており、LGBTが注目されたことによって、突然、ふっと湧いて出てきた市場ではなく、もともとあったマーケットの中の一部である。また、LGBTの人口割合が、ここ数年で5%から7%に上がっているという調査結果もあるように、年々、調査の精度向上や数字の変化が著しいこと(例えば、LGBTを隠している人が多いことや、40代以上になってLGBTと自覚することも少なからずあることなどから潜在層が多く、数字の把握が難しい事情があること)からも、今後、更に信ぴょう性の高いデータが期待されている。つまり、取りざたされている6兆円市場とは、LGBT層がLGBTとしてではなく個人として消費している市場規模であり、国内全体の消費にLGBTの比率を乗することで求められた市場規模を言うのみにとどまっていることを理解しておくことが重要である。

一方で、こういった調査が進むにつれ、LGBT層の消費傾向などが少しずつ分析されはじめてきており、企業にとってみれば新たなマーケット開拓のチャンスであることは確かなようである。例えば、LGBT当事者は子どもがいない比率が多いので自己投資費用が多く、既存社会から解放されるための旅行費用や自宅での環境作り(自宅での食費、インテリア、ペットなど)にお金をかける傾向にあること、更には、老後についての貯蓄意識が高いという調査結果も出ている。特にLGBT層は可処分所得が高いようなので、企業が、この層をターゲットにビジネス展開を目論むのは当たり前のことであり、6兆円市場として注目される所以も、この辺りにありそうである。

最近、このLGBT市場に甘い期待をして、安易に何かをやろうとする企業のことをよく耳にする。LGBT向けの旅行、パーティやイベント、雑誌の発行、果ては企業内の制度改革など、LGBTという旬の話題に便乗したPR効果というのもメディアが書き立てるほど高くはなく、想定していた期待値とは裏腹に多くは失敗(反応が薄い)に終わっているようである。なぜなら、LGBTに関連するあらゆるものが、まだこれからであり、国内では、もともと一割に満たない人口割合なので、そこに対して新しい商品やサービスやルールの提供を闇雲にしたところで、ビジネスや制度としてすぐに根付くことはかなり難しいといえる。もし、企業がLGBT市場に対して本気で考えるなら、それなりの時間と労力を惜しみなくかけて対応すべきである。

冒頭の問いに戻ると、確かに、国内には6兆円という規模のLGBT市場は存在する。
ただし、今は、その市場は新規に創出された市場ではなく、あくまで既存市場を分類した内訳の一部であり、LGBT層が一個人として消費する市場規模である。よって、現在は、いわゆるLGBT6兆円市場が我々に恩恵を与えることはない。しかし、この市場規模は、おそらく年々、驚異的なスピードで伸びていくと思われる。そこで、企業に求められるのは、色気を出して安易に足を突っ込むのではなく、市場を新しく作る気概と継続的に支える忍耐力の両輪をもって活動することである。

そうしないと、6兆円は6兆円のまま、我々には何の恩恵も与えてはくれない。

2020.07.10

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いろいろな職種と人種と性別で構成されるglassgempopcornのメンバー。