GIDの僕が企業のLGBTへの取り組みについて思うこと
少し前から、LGBT関連の取り組みを行っている企業のニュースをよく見かけるようになりました。今後、LGBT当事者にとって働きやすい環境が整備されていくのでしょうか。
トランジェンダーの僕が職場で困っていたこと、そのいちばんはトイレでした。
未治療の際は、当時周りも僕を女の子として認識していたため、男子トイレには入れないし、かといって女子トイレに入ることは苦痛でしかありませんでした。治療後は男子トイレには普通に入れるものの、常に個室に入らなければいけないため、毎回周囲の目が気になっていました。
中にはそういった周囲の目を避けるためトイレを我慢し、排泄障害や膀胱炎になってしまう人もいると聞きました。僕の場合、治療前は、どう見られているのか、どう思われているのかが気になっていましたが、治療後は、知られたらどうしようなど、今度は違うことが気になるようになりました。人にもよりますが、治療をしていても、していなくても、不安は何かしらあるのではないかと思います。
きっと、求職時や就労時のことをLGBT当事者に聞けば、僕同様、さまざまな苦労話が出て来ると思います。ですが、そういった話を聞くと、企業側はLGBTを可哀想だとか、弱者として捉えてしまうのではないでしょうか。
そうではなく、ただ普通の人より少し社会生活に不便を感じることが多い普通の人間なんだと理解していただけると、問題の本質が見えてくるような気がします。
僕自身も、職場で望んでいたのは、認知や理解を深めて欲しいということよりも、物理的なことの解決でした。たとえば社内に共用トイレを設置する。制服があるならば、可能な限り男女共通のデザインにする。備品や設備は、性別を問わず、使いやすい環境になっている。そんな会社だったら、少しは精神的に楽でいられたかなと思います。
人間関係に関しては、ある程度は本人次第な所もありますし、こればかりはLGBTに限らず「差別はだめだ」と言ってもする人はしますし、受け入れられない人だっているのは分かっているので、僕はそこを何とかして欲しい、とは思いません。
ですが、これはあくまでも僕個人の思いです。中には人間関係で嫌な思いをし、もっと企業に理解、認知を深めて欲しいと感じているLGBT当事者の方だっていると思います。
これから、企業がLGBTとどう向き合っていくのか興味もありますが、僕ら当事者自身も、社会に、そして企業に助けてもらうというスタンスではなく、少し協力をしてもらう、くらいの気持ちを持ち、こちらからも社会、企業に歩み寄ることが大切なのではないかと僕は感じます。
個性を自由に出して働ける。そんな環境が早く多くの企業で整うことを願います。
NAO
大阪在住。幼少から性の不一致で苦しんだ自身の体験を広く伝えたいと、本メディアでライターデビュー。これまでのこと、日々のさまざまなことをコラムとして自分目線で紹介する。