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レズビアンに対し、中国人と中国系アメリカ人とでは考え方が違う?

レズビアンに対し、中国人と中国系アメリカ人とでは考え方が違う?

キューバのハバナで詐欺に遭ったことがある。詐欺師が連れて行った場所は中国人のいないチャイナタウンのカフェだった。後から聞いた話では、以前は名前の通り、中国人が住んでいたが、キューバ革命以降、国外に出て行ってしまった世界でも珍しいチャイナタウンなのだそうだ。中国という国柄や国民性は様々な映像や本から伝わってくるが、世界のチャイナタウンに住む二世、三世の中国人の暮らしぶりは、なかなか伝わってこない。

先日、友人に、その話をするとアメリカ映画「素顔の私を見つめて・・・」を勧められた。2006年に「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭」などのイベントで上映された作品である。

物語はニューヨークのチャイナタウンが舞台。映画の中で中国系アメリカ人が集まるパーティーが度々、登場し、チャイナタウンで暮らす人々の生活が垣間見える。ダンスで盛り上がるパーティーはアメリカ的だが、親が自分の子供の結婚相手になりそうな中国人を見つけようとする風習は中国的だったりする。

「結婚したら旦那に従わなくちゃダメ。アメリカ人に習っちゃダメよ」

散りばめられた会話の中からも、チャイナタウンの中国人が感じられる。

主人公のウィルは優秀な女性医師だ。中国人コミュニティの狭い世界に縛られ、レズビアンであることを隠して生きている。ウィルを育てあげたシングルマザーの母親のホイランに連れてこられた中国系アメリカ人のパーティーでバレエダンサーのヴィヴィアンに一目惚れし、その後、二人は恋に落ちる。

ある日、ホイランは新しい恋人の子供を宿っていることが発覚する。結婚もしていないのに子供を作ったことで実家を追い出され、一人暮らししている娘のウィルのマンションに転がり込んでくる。ホイランはお腹の子供の父親を一切、言わない。レズビアンとシングルマザーの妊娠。中国本土であれば、どちらも厳しい環境の中にさらされるだろうが、ニューヨークなら大丈夫・・・と思いきや、チャイナタウンは、そうでもないらしい。逆に狭いコミュニティが仇となり、噂は一気に広まる。ホイランへの風当たりは強く、周囲から白い目で見られ、家で麻雀大会を企画するが誰も来ない。

そんな中、ウィルは結婚をしつこく勧めるホイランに自分がレズビアンであることを告げる。
「(母親を)愛している。私・・・ゲイなの」

「愛している」からカミングアウトを始めるところにウィルは中国人ではなく、中国系アメリカ人だなぁと感じさせられる。感動的なシーンになるかと思いきや、ホイランはこうつぶやく。

「なぜ二つ一緒に言うの?娘はゲイじゃない」

保守的なホイランは娘のレズビアンを受け入れようとはしない。公言できない父親の子供を身ごもったことに対する自分の負い目とは別問題なのだ。

ウィルとホイランの会話にチャイナタウンの中国人の考え方が凝縮されている。このLGBT映画は自分の生き方の選択についても考えさせてくれる作品である。

「素顔の私を見つめて・・・」
2004年 アメリカ
監督 アリス・ウー
主演 ミシェル・クルージ
   ジョアン・チェン他

2017.09.22

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp