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恋人の女性のために男性相手の売春を続けた女性死刑囚

恋人の女性のために男性相手の売春を続けた女性死刑囚

ロードムービーの名作で、よく挙げられる作品に「テルマ&ルイーズ」(1991)がある。これが1989年から90年にかけ7人の男性を殺害した連続殺人犯のアイリーン・ウォーノスからインスピレーションを受けて創られたと聞いて驚いた。ちょうど彼女を元にした映画「モンスター」とドキュメンタリー映画「アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女」を観たばかりだった。連続殺人犯のアイリーンは女性の恋人(一年で恋愛感情は冷め、親友になったと言っている)がいながら、男性向けの売春で生計を立てていた。彼女の波乱の人生は想像を絶するものがある。

両親は彼女が生まれる前に離婚している。父親は13歳の少女への強姦罪で服役中に自殺、母親は彼女の生後6か月(4歳の時という話もある)の時に家を出ていった。こうして祖父母に育てられることになる。

その祖父から彼女は性的虐待を受けるなど決して恵まれた子供時代ではなかった。彼女自身、若い頃から複数の異性と性的な関係を持ち、その中には実の兄もいたそうだ。そして14歳で妊娠、出産するが、子供は、すぐに養子に出されてしまう。

その後、森の中の廃墟や廃車の中で生活し、娼婦として生計を立てるようになった。暴力行為などで何度か逮捕された後、一度だけ69歳の裕福な男性と結婚している。ここが彼女の人生を変えるチャンスだった。しかし、その結婚は1ヵ月で破局した。

軽犯罪で逮捕されることが続き、30歳の時にゲイバーで、6歳年下のティリア・ムーアと出会った。恋人同士になり、同棲を始める。当時、ティリアはホテルのメイドとして働いていたが、彼女と暮らすようになってからは辞めてしまい、アイリーンの売春の手助けをしていたというのだから話はややこしい。

この時、アイリーンは30歳を超え、娼婦としては高齢になってきたことから、なかなか客がつかなくなる。当然、生活も苦しいので盗みを働くようになり、ティリアと出会って二年後、ついに殺人を犯す。ドキュメンタリー映画では最初の殺人に関して彼女は正当防衛を主張していた。殺害された男性に縛られ、殴られ、性的暴行を受けていたと言うのだ。実際、その男性には彼女の証言に通じる性犯罪の過去歴があった。しかし、結局、彼女の主張は認められていない。

7人も殺害しているのだから彼女が死刑になることはアメリカの法律からすれば仕方がない。しかし、どこか胸の中にわだかまりが残る。映画「モンスター」の中に、アイリーンがティリアにつぶやくシーンがある。

「男も女も嫌い。でもあんたは好き」

彼女の人生が重なり、切なくなる。
2002年10月9日、彼女は薬物注射によって死刑が執行された。

参考:
「テルマ&ルイーズ」(1991 アメリカ)
監督:リドリー・スコット 主演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス
「モンスター」(2003 アメリカ)
監督:バディ・ジェンキンス 主演:シャーリーズ・セロン
「アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女」(2004 アメリカ)
監督:ニック・ブルームフィールド、ジョーン・チャーチル

2017.09.21

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp