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GIDの僕が、熊本での活動を終えて、いま感じていること

GIDの僕が、熊本での活動を終えて、いま感じていること

今年の3月より、LGBTの被災地調査のため、熊本にて活動をして来ましたが、この度、半年間の業務を無事に終えることができました。

今回の活動を振り返ってみると、本当に貴重な経験が出来て、勉強になった半年間だったなと思います。

当初は、初めて訪れる土地、知り合いもいない、ということだけで不安もありました。それに加え、自分がGID(性同一性障害)ということを公にしての活動が初めての経験だったため、戸惑いだらけのスタートとなりました。

ですが、仮設住民の方や支援団体の方、地元当事者団体の方など、たくさんの方々と関わることが出来、また、補佐ではありますが初めて人前に立ち、LGBTの講演会を開催することも出来、大きく自分が成長できた半年だったと感じています。

これまでの自分からすると、戸籍変更後に「わざわざ知らない人にカミングアウトをする」なんて考えもしなかったことでしたし、一生必要のないことだと思っていたので、人生というのは、本当にいつ何が起こるか分からないものだと思いました。

そして、現地で仮設住宅の住民の方や別の支援団体の方々にカミングアウトすることで、たくさんの温かい言葉をいただいたり、応援してもらうことで、「自分が抱えてきた悩みは大したものではなかったんだ」と思えたり、GIDであることは自分の一個性であると考えられるようにもなってきました。

いまは前の自分よりも、少し自分を受け入れてあげられるようになったように思います。今回の活動の経験を経て、すごく前向きに考えられるようになったとか、もう誰にカミングアウトをしても怖くないとか、大阪に戻ってから自分もLGBTの啓発活動をしたいとか、そんな大きなことは決して言えませんが、着実に自分の中では大きな変化があったと感じています。

現地では地元のLGBT団体の方々と接触し、被災時の話だけでなく、色んな人生経験の話を聞けたことも大きな糧になりました。また熊本のLGBT当事者の方たちは地元の繋がりをとても大切にしていて、当事者同士の助け合いがしっかり出来ているようにも感じました。これはもしかすると、ともにあの大地震を乗り越えたことも影響しているのかもしれません。

正直なところ、九州ということでLGBTに対しての理解はまだまだなのかなと思っていました。しかし、LGBTを知らない人はもちろんたくさんいましたが、LGBTだから診断をしてくれる病院がないとか、誰にも相談が出来ずに悩み、困っているという人は、僕が出会った人の中にはいませんでした。それどころか、みんな明るく、セクシャルマイノリティーであることを楽しんでいるようにさえ見えました。

こういった当事者間での連携が取れている地域がたくさんあれば、今後また大きな災害が起こってもみんなで乗り越えられるに違いない。熊本を見ていてそんなことを思いました。

この半年間、楽しいことばかりではありませんでしたが、終わってみて思ったことは、「熊本で活動させてもらえて本当に良かった」という感謝です。この経験を、今後に生かせていけたらと思います。

2017.08.28

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NAO

NAO

大阪在住。幼少から性の不一致で苦しんだ自身の体験を広く伝えたいと、本メディアでライターデビュー。これまでのこと、日々のさまざまなことをコラムとして自分目線で紹介する。