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中国がLGBTの抑圧が厳しくなっている?緩和されている?ホントのところはどうなの?

中国がLGBTの抑圧が厳しくなっている?緩和されている?ホントのところはどうなの?

中国で、このところLGBTに対する締め付けが厳しくなっているという話を聞いた。その一方で、ここ数年、中国にはLGBTの明るいニュースも聞く。

たとえば中国におけるLGBTの市場規模は広がっており、33兆円を突破したと報じられたのである。いつの間にか中国のLGBTマーケットはアメリカ、ヨーロッパに次ぐ三番目の大きな市場だと叫ばれるようになったのだ。そりゃそうである。中国におけるLGBTの人口は5000万人とも7000万人とも言われ、それだけで国が一つできてしまう(ちなみにスペインの人口が約5000万人、イギリスが約7000万人)のだから。

しかも中国人のLGBTの平均月収は中国の全国平均の5倍にあたるとのデータがある。つまり稼ぎがいいのだ。LGBTの人たちの能力が高いことに加え、彼らに子供がいないので自由に使えるお金が多いことも市場規模が大きい理由である。

それが追い風となり上海ではLGBT向け求人説明会が行われ、北京では未だに同性愛を「精神的疾患」と記述している教科書を巡って、教育省を訴えた20歳の女子学生の訴訟の審理を行われることになった。河南省ではゲイの男性が精神病院に強制的に入院させられ、「矯正」治療されたと訴えた裁判で、裁判所は男性の主張を認め、謝罪と慰謝料を求めたのである。そして何より中国の同性愛者向けの出会い系アプリ「Blued」の存在である。これが爆発的な人気を誇り、ユーザー数2200万人を突破しているのだ、

しかし、その一方で昨年の春、テレビ番組でLGBTの描写が禁止になり、検閲が厳しくなっているという話もある。今年の夏、つまり、この夏にはインターネットでの視聴ソフトのLGBTなど自由な表現を禁じる規則もできた。

また、湖南省では男性の同性カップルが婚姻届けの不受理を違法として提訴したが敗訴し、根本的な中国の保守的な社会の根深さも垣間見える。元々、中国は2001年までは同性愛は精神的疾患と位置づけされ、未だにいたるところに「同性愛治療クリニック」なるものが存在しており、一般社会では、まだまだLGBTは病気だと思っている人が多いのだ。よって中国のLGBTの特徴として家族には言えないゲイが圧倒的に多い。しかも中国人は家族を大切にする国民性で、近年の一人っ子政策がさらに彼らを苦しめる。子供を残すことを期待されているのだ。そこでゲイを隠したまま結婚し、子孫を残すゲイも少なくない。

同性愛は伝統と文化的、思想的な進歩に逆行するという考えが中国に根強く残っているとも言えるし、習近平をはじめとした指導部は同性愛うんぬんより基本的人権の尊重など欧米流の価値観が入ってくることを警戒しているという話もある。一進一退ならいいが、一進二退にならなきゃいいんだけどね。

2017.08.23

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp