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東海テレビさん、またやってくれましたね!

東海テレビさん、またやってくれましたね!

東海地区のテレビ番組で数か月に一度、旅をさせてもらっていることもあり、テレビ関係者と話す機会が多くなった。

「テレビのコンテンツ不足が叫ばれる中で東海テレビはがんばっているよなぁ」
「面白い局?東海テレビでしょ?」

このところ、よく話題に出るのがフジテレビ系列の東海テレビである。東海地区だけの話と思いきや東京在住の関係者からも「東海テレビ」の名前が出るので全国区で注目を集めているのだろう。

僕自身も、昨年、拝見したドキュメンタリー映画の中で一番面白かった作品に「ヤクザと憲法」を挙げるが、これも制作は東海テレビなのである。

「東海テレビが創ったCM観た?」

先日、僕がLGBTの取材をしていることを知っているディレクターから聞かれた。どうやら東海テレビが制作したLGBTをテーマに制作されたCMが話題になっているそうだ。地上波では一度しか流さなかったが、Youtubeで観られるようになっていた。

5分間のテレビCM「この性を生きる。」は性的マイノリティの人たちが「性」をテーマに自分自身の物語を淡々と語っている。

「僕の人生は、僕のために生きる。自分の人生は自分しか生きることができない」

「トランス(ジェンダー)で人に言えなくて、身体を変えなきゃいけなくて、認められなくて、でもお金がかかって、職がなくて、そりゃ死にたくなっちゃうよね…(中略)…そんな残酷な社会なんだ」

「全世界のゲイ、レズビアンが一人だけでカミングアウトすることだけで世の中は変わると思いますよ」

「普通じゃない…、その中で我々はうごめいている。何が正しいって言えないんですよね。受け入れられない人も非難できない」

「自分の家族(娘がレズビアンだとカミングアウトした)だと受け入れられなくて。それはなんでだろうと思ったら、自分の中に偏見があったんですよね。消化能力がなかった…」

宝のような言葉や心に刺さる言葉が散りばめられている。この映像には音楽もなければナレーションもなく、今やテレビでは当たり前になった話し言葉の字幕もない。LGBTの説明は入っていないし、説教じみたメッセージもない。そこに映し出されているのは、まさに、この性を生きている人たちの想いだけ。受け取り方はそれぞれでいい。たとえLGBTのことを知らなくて、そこで理解したいと思ったら調べればいいのだ。

普段、我々が観ているテレビ番組は、とにかくわかりやすく、そして、これでもかというくらい説明する。視聴者が「?」となる時間を少しでも減らさなくては視聴率が取れないのだとディレクターが言っていたことがある。今回の映像は、今のテレビ業界の常識とは対照的な作品だ。その潔さが気持ちいい。東海テレビさん、またやってくれましたね。

2017.08.22

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp