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「みんなと同じになりたくない。でも結局、同じなんだけど」って思ったことありませんか?

「みんなと同じになりたくない。でも結局、同じなんだけど」って思ったことありませんか?

スゥエーデン映画をご覧になったことはあるだろうか。世界で2000万部売り上げた小説を元にした「ドラゴンタトゥーの女」(2009)が話題になったことはあるが、「100歳の華麗なる冒険」(2013)のような温かいコメディや「さよなら人類」(2014)のような北欧独特のブラックコメディの要素が強い作品がスウェーデン映画の特徴である。

同性愛者、特にレズビアンと話していると、真っ先に出てくるスゥエーデン映画に「ショー・ミー・ラヴ」が挙がる。
1990年代後半の映画だが、今も不動の人気のようだ。物語は片田舎に住む16歳の高校生の物語。

※ここからはネタバレになるので、観る予定のある人はここから先は読まない、もしくは映画を観てから読んでください。

引っ込み思案で友人がいないレズビアンのアグネスは、同じクラスの問題児エリンのことが好きだった。そのエリンはアグネスとキスをしたら20クローネもらうという賭けを姉のイェシカとする。そして、エリンは実行するのだが、その後でアグネスに賭けだったことを告げて謝る。

それがきっかけで二人の距離は縮まった。

エリン「あんたヘンだよね?」
アグネス「あんたもヘンだよ」
エリン「ヘンでもいい。みんなと同じになりたくない。でも結局、同じなんだけど」

エリンの発言は性別や性的指向に関係なく、自分の思春期を思い出させる。

この夜を境にエリンもアグネスのことが気になり始める。しかし、友人たちに、そんなことは言えば、「レズビアン」とからかわれるので言えない。そんな折、エリンは姉から男性と付き合わない理由を問い詰められ、好きな子を聞かれる。アグネスと答えるわけにもいかず、好きでもない男性ヨハンの名前を出す。ヨハンはエリンのことが好きだったので二人は付き合うことになってしまう。エリンは「これでよかったのだ」と自分に言い聞かせるようにして学校ではアグネスにつらくあたるようになる。結局、エリンとヨハンは別れてしまう。

クライマックスで、エリンは強引にアグネスに女子トイレの個室に籠り、好意を持っていることを告白する。エリンの周囲は彼女が男性を連れ込んだと思い、はしゃぎたて、トイレに、どんどん人が集まってくる。

エリンは戸惑うが、アグネスは動じない。

「ずっと隠れてはいられない」

アグネスの言葉にエリンも腹が据わり、二人は堂々と手をつないでトイレから出る。周囲はあっけにとられるところで映画は終わる。なんとも爽快で後味がいい。

同性愛者の住みやすい国ランキングで毎年、上位に入ってくるスウェーデンでさえも、この映画が製作された1990年代後半は、まだ同性愛者に対し、特別視する部分があったのだ。それでも、この国が根本的なところで他人を尊重する風土が映画全体に漂っている。

ショー・ミー・ラヴ(1998年 スゥエーデン)
監督:ルーカス・ムーディソン
出演:アレクサンドラ・ダールストレイム、レベッカ・リリエベリ他

2017.08.17

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp