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GIDの僕が学生時代にいちばん嫌いだった授業「水泳」

GIDの僕が学生時代にいちばん嫌いだった授業「水泳」

夏の思い出と聞くと、まだ僕が「女の子として生活をしていた」学生時代のプールの授業を思い出します。

僕はGID(性同一性障害)で、FTM(女性で生まれ、性自認は男性)なのですが、学生時代はまだ自分のことがはっきりと分かっていなかったため、違和感がありつつも普通の「女の子」として暮らしていました。

その学生生活の中で、何が一番辛かったのかを考えると「水泳」の授業でした。制服よりも、さらに自分が女子であることを突き付けられる水着を着て泳がなければいけない。その苦しさは今でも鮮明に覚えています。

水着を着て泳ぐことだけでも苦痛で仕方がないのに、さらに僕の場合、好きな子が同じクラスにいたため、その水着姿をその子に見られることも非常に嫌でした。だから僕は水泳の授業を、当時、拷問のように感じていました。

その子は当時、僕がGIDだということも知らないし、ましてや僕がその子のことを好きだなんてことも知らないので、僕が女子の水着を着て苦痛に思っているなんてことは夢にも思ってはいなかったでしょう。

当時は、「どうすれば水泳の授業をうまくサボれるだろう?」と、そんなことばかり考えていました。ですがその時の自分にはいい案が全く思い浮かばず、仕方なく夏が終わるまで大人しく授業を受けるしかありませんでした。

人によっては体調不良や、生理だと言って見学する子もいますが、それだと一時的な言い訳にしかならないし、「生理」だと言えば、それこそ余計に自分が女子であるという事実を認めざるを得ません。そんなウソをつくことにも抵抗があり、たかだかプールの授業ひとつで本当に葛藤し、悩んでいました。

こういった問題は、心と体の性別が不一致のために起こるGID特有の悩みですから、ピンと来ない方が多いかもしれません。

しかし、あなたが女性で、水泳の授業で「男子の水着を着て授業を受けろ」と言われたらどう感じますか? 男性の場合も同様に、「女子の水着を着用して授業を受けろ」と言われたら、どう感じますか?

そのことを想像していただけると、GIDと呼ばれる当事者の心の葛藤がどんなものなのかが、少しだけ想像できるかもしれません。

昔のことを思うと、戸籍変更を済ませた今となっては、当時に比べれば本当に生活しやすくなったなと改めて感じます。海にもプールにも普通に行けますし、胸を隠すために猫背で歩く必要もありません。

トイレなどの不便はどうしても毎回個室になるため、今でもあることはありますが、それでもSRS(性別適合手術)をする前に比べれば随分と楽になりました。今年も、夏はもうあとわずかですが、海やプールや川遊びを堂々と満喫したいと思います。

2017.08.07

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NAO

NAO

大阪在住。幼少から性の不一致で苦しんだ自身の体験を広く伝えたいと、本メディアでライターデビュー。これまでのこと、日々のさまざまなことをコラムとして自分目線で紹介する。