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GID(性同一性障害)である僕が避難所をまわってみて感じたこと

GID(性同一性障害)である僕が避難所をまわってみて感じたこと

先日、豪雨によって、たくさんの避難者が出た福岡県の杷木町(はきまち)の避難所へ支援の手伝いに行ってきました。

熊本から福岡へと車で向かったのですが、高速を降りると、早々に衝撃的な風景を目にしました。

元の状態が分からなくなるほどの、大量の流木や土砂が道路に押し寄せ、至る所が通行止め。それは、災害の激しさを物語っているようでした。僕が熊本の被災地に入ったのは今年の4月だったため、当時は避難所の様子を見ることはできませんでした。だから今回、初めて“避難所”という場所を僕は生で見ることになりました。

GID(性同一性障害)当事者である僕が、避難所をまわっていて気になったことがあります。それは、いずれの避難所にも、掲示板に掲示されているチラシやポスターには女性専用ホットライン、福祉や学校、施設の案内などの情報はたくさんあったのですが、LGBTを含むマイノリティーに関する情報はほとんど見当たらなかったことです。「もしLGBT当事者が避難所で困っていたらどうすればいいのだろう?」と思いました。

避難所の外に設置された簡易トイレは、男女別ではなく共用になっている所もあり、GIDの僕としては使いやすいように感じました。ですが、お風呂はやはり、男女で分かれており、使いづらいと感じました。簡易的の個室のシャワールームでもあればいいのにと思いました。

避難所運営をされている人に、LGBT当事者からの相談や、何か話を聞いたりはしていないかの確認をしてみたのですが、「特にそういった話は今のところ聞いていない」と言っていました。

これが本当に、避難所に当事者がおらず、困っている人もいない、というのであれば何も問題はないのですが、日本でのLGBTの人口が全体の7.6%という数字を考えれば、「どの避難所にも、ひとりはLGBT当事者の方がいてもおかしくはないはず」です。もしかすると見えない存在、知られてはいけない存在だと思い、埋もれてしまっていないかとても気になりました。

もし自分が未治療で、誰にも打ち明けていない状態で災害が起き、避難所で生活をしなければならなくなったケースを考えてみると、誰よりも人目が気になり、お風呂にも入れず、とてもではないけれど安心して過ごせないし、そこに居たくないと思います。

今回、避難所を見てまわる中で、避難時、LGBT当事者が安心して、当たり前にそこにいられる環境をもっと整える必要があると感じました。また今後もどこで起こるか分からない災害に対し、LGBTだけに留まらず、マイノリティーの方々のためのホットラインは必要だと現場を見て強く感じました。

そして1日でも、少しでも早く、福岡県の杷木町に、日常の風景が戻ることを心より願います。

2017.07.24

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NAO

NAO

大阪在住。幼少から性の不一致で苦しんだ自身の体験を広く伝えたいと、本メディアでライターデビュー。これまでのこと、日々のさまざまなことをコラムとして自分目線で紹介する。