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養子縁組と同性婚、いまを生きるか未来に期待するか?

養子縁組と同性婚、いまを生きるか未来に期待するか?

養子縁組と聞くと子供のいない夫婦のための制度というのが僕のイメージである。

しかし、先日、ゲイカップル、レズビアンカップルの間で同性婚と同じ感覚で養子縁組を選択する人が多い話を聞いた。

そこには養子縁組制度のからくりがある。どちらかが一日でも早く生まれていれば養子縁組を結ぶことができるのだ。申請書類だけを見れば、婚姻届けと、さほど変わらない。よって長く交際している同性カップルは養子縁組を選択することがある。

家族になるという精神的な安心感はもちろんのこと、どちらかに何かあったとき、遺言なしで遺産相続ができる。当然、遺産にかかる基礎控除が増えてくる。つまり税金対策にもなるのだ。また、養子縁組になれば共同で不動産が購入できる。病院で恋人が入院や手術の際、病室に入れてもらえない話をよく耳にするが養子縁組になれば、そんなことはなく、入院や手術の際、「同意書」にサインすることもできる。そう考えると養子縁組はメリットばかりのように思われるが注意しなくてはいけないこともある。

アメリカはペンシルバニア州に住む元教師の79歳と69歳のゲイカップルは養子縁組を選択していた。彼らは当初、ニューヨークに住み、法律的に内縁関係にあるカップルとして役所に登録していた。しかし、2000年、彼らはペンシルバニア州へ引っ越すと、ニューヨーク州とは法律が違うため、同性の内縁関係が認められなくなってしまった。そこで彼らは養子縁組を選んだ…というより選ばざるをえなかったと言った方が正しいのかもしれない。彼らは自分たちの年齢を考慮し、もし、どちらかに何かあった時に備えての決断だったのである。

時代は流れ、2014年ペンシルバニア州でも同性婚は解禁になった。彼らは晴れて結婚することに……と簡単にはいかなかった。2人は法律上では父と息子である。2人の法的関係を解消することも身内同士が結婚することも禁止されているため、裁判官は結婚できないと通告したのだ。2人は控訴した。時代も後押しをして、その願いは一年後、受理され、彼らは何とか結婚することができた。彼らの場合、養子縁組から同性婚へ移行できたが、必ず移行できる保証はない。そんな簡単に移行できたら制度としては不完全ということになるのだから。

日本もいずれ同性婚が認められる日が来るとは思う。しかし、それがいつかはわからない。それだったらペンシルバニア州の二人のように養子縁組になって安心するということも一つの選択肢である。ただし、養子縁組を解消し、同性婚へ移行することが難しいことは頭に置いておかなくてはいけないだろう。

今を生きるか、将来に期待するか。こればかりは本人同士で決めるしかない。

2017.07.22

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp