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同性婚を認めると自殺率は減る!?

同性婚を認めると自殺率は減る!?

2015年アメリカ最高裁判所が同性婚を認めてから約2年が経つ。

コスモポリタン・アメリカ版の記事によれば、ジョンズ・ホプキンス大学は同性婚を認めている州と自殺率の関係を調べている。この2年の間に同性婚を支持する州で10代の若者の自殺率が7%減少したそうだ。

LGBTQの若者に絞ると14%も減少している。一方、同性婚に反対した州を調べると自殺率に変化は見られなかった。

「10代にとって結婚は身近とは言えないのではないか?」といった疑問もわく。しかし、LGBTQの若者が同性婚を選択するかどうかはともかく結婚する権利があるというだけでも生きやすさは変わってくるだろう。このデータを発表した大学の研究主任も「社会的に否定さてれているという感覚を弱め、将来に対する希望を抱かせるのだと思います」と述べている。

ふと、カナダ映画「翼をください」(2001)を思い出した。観ていない方にはネタバレになってしまうが、映画が創られてから15年以上経ち、今の世の中だったらレズビアンのポーリーは自殺しただろうか。

映画は女子高の寄宿舎を舞台に繰り広げられる恋愛物語である。同室のトリーとポーリーは恋愛関係にあった。しかし、ある日、彼女たちは二人の部屋へ悪戯まがいに入ってきたトリーの妹やその友達たちに、裸で抱き合って寝ているところを見られてしまう。学校内に二人の噂は一気に広まる。トリーは保守的な思考の強い両親に関係性を知られたくないのでポーリーと距離を持つようになり、男性と交際を始める。一方、ポーリーは自分がレズビアンであることを隠さず、トリーに愛を告げ続ける。その恋は実を結ぶことなく、ポーリーは自殺する。

この映画の公開後、カナダでは、ケベック州の連邦裁判所など続々と同性結婚の禁止が権利憲章(憲法)に反する裁定をくだし、同性結婚は合法化されていく。現在、カナダは居住条件抜きで同性結婚を認める世界で唯一の国である。ヘテロ(異性愛者)でも結婚という制度がピンと来ず、27年になるパートナーと未だに籍が入っていない僕からすれば、一つの紙に過ぎないとも思うが、それは結婚を選択できる立場と選択できない立場とでは全く違うということは理解できる。

ただでさえ自殺率の高いLGBTQの人たちにとって、同性婚が自殺抑止になるという研究は今後の一つの説得力になるかもしれない……と、ここまで書いてから、先ほど、もう一度、映画「翼をください」を観なおした。

ポーリーの場合、たまたまレズビアンだっただけで、来世、たとえヘテロに生まれても、あれだけ純粋な愛と壊れそうなメンタルの持ち主だったら、男性に恋をして破れても自殺していたかもしれない。

「翼をください」 (2001年、カナダ)
監督:レア・プール
出演:パイパー・ペラーポ、ジェシカ・パレ、ミーシャ・バートン

2017.07.21

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp