妻からパンセクシャルだと告げられたら、どう答えますか?
「実は私、パンセクシャルなの」
妻から、そう告げられたら、夫はどう答えたらいいか。
先日、久しぶりに会った知人とビールで乾杯したかと思ったら、いきなり難しい質問をふられた。彼の周囲の夫婦で出た話らしい。
パンセクシャルとは全性愛のことである。バイセクシャルとどう違うのか。バイセクシャルは異性、同性にかかわらず、どちらも恋愛対象になる。つまり、そこには男性の部分、女性の部分に惹かれるという要素がある。一方、パンセクシャルの場合、恋愛対象の中に性別という意識がないことが大きな違いだ。
さて、質問に戻ろう。
妻から、「パンセクシャル」と告げられたら、あなたなら、どう反応するか。もちろん、夫から告げられたら……でもいい。
僕は、ここ数年、アライ(支援者)の立場で取材させてもらっているので、「そんなの関係ないよ。すんなり受け入れようよ」と言いたいところだが唸ってしまった。
「やっぱり戸惑うかぁ…」
知人は僕の唸る様に、がっかりしたようでもあり、ほっとしているようでもあった。
僕が、まだ、パンセクシャルを理解できていないこともあるし、パンセクシャルという言い方は人それぞれで解釈が違うこともある。また、夫婦ケンカの売り言葉に買い言葉で、こういった発言をする人もいるし、宗教的な考えから全性愛を唱える人もいるので、一概に答えを出せないということもある。LGBTの中にパンセクシャルは入っていない。LGBTという概念が根本的な部分で男女二元論を元にして生まれているからだろう。LGBTではなく、LGBTQという言い方が広がってきており、「Q」というカテゴリーの中にパンセクシャルも含まれているという人もいるし、含まれていないという人もいる。
ミュージシャンで女優のマイリー・サイラスはパンセクシャルをカミングアウトしているが、彼女がローリングストーン誌のインタビューの中でこう答えている。
「私は「バイセクシャル」って言葉が嫌いなの。まるで箱の中に押し込めるような言い方だもの。誰かを男としてとか、女として、なんて考えたことがないのよ…」
彼女の場合、LGBTQの枠にパンセクシャルは入っておらず、彼女の場合、男女二元論の考えがないのだ。将来的には彼女のような考え方が主流になっていくと思うが、まだまだ男女二元論の思考の壁は厚い。
もし、自分のパートナーからパンセクシャルだと告げられたら、まずはいろいろ話を聞いてみる、そして、今度、どう生きていきたいのか、どう関わっていったらいいのかを一緒に探っていく……と何杯も酒を酌み交わした末、結局、これしか答えられなかった。
それはパンセクシャルどうのこうのではなく、人としての付き合い方に過ぎないんだろうけど。

イシコ
女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。
セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp