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世界チャンピオンへゲイボクサーの挑戦

世界チャンピオンへゲイボクサーの挑戦

ゲイをカミングアウトし、活躍しているプロボクサーがプエルトリコにいる。

彼の名は「オーランド・クルス」。

彼の話をする前にプエルトリコについて少し触れておく。メキシコの東側、カリブ海に島が並んでいる。カストロの死去で話題になっている社会主義国のキューバ、その隣に野球が盛んなドミニカ共和国、その東側にある四国の半分程度の島がプエルトリコである。

国ではなくアメリカの自治州、つまりアメリカの正式な州ではない。住民にはアメリカに合衆国連邦税(所得税)の納税義務はないけれど 大統領選挙の投票権もない。サイパンと同じである。あくまでアメリカの領土という位置づけで、今後、州になるのかどうかは以前から言われているが、現在のプエルトリコの財政危機は深刻で、なかなか難しい。今回の大統領選でも、プエルトリコの問題は争点の一つになった。

このプエルトリコではLGBTに関しても物議を醸し出している。昨年、アメリカの連邦最高裁判所が同性婚を認める判決を出したが、プエルトリコの連邦裁判官がアメリカの最高裁の判決は、プエルトリコには当てはまらないので違法と下したのである。その判決に対し、プエルトリコの知事はプエルトリコでの同性婚は合法だと発言したので更にニュースは世界を駆け巡った。ちなみに現在、プエルトリコ自治州の法律では同性婚は禁じられている。9割近くがキリスト教徒であるプエルトリコではLGBTに対する風あたりは強いのである。

そんな状況の中から出てきたのがゲイのプロボクサー「オーランド・クルス」だった。日本でも話題になったトランスジェンダーのムエタイの格闘家はいるが、プロボクシング界でゲイをカミングアウトした選手は初めてなのではなかろうか。

ボクシング界のLGBTに関しては、フィリピンに8階級制覇したプロボクサーで政治家の「バッキャオ」が「同性愛者は動物以下だ」と発言したことが記憶に新しい。この発言が原因で彼は長年スポンサーだったナイキから契約を打ち切られた。オーランド・クルスも批判し、結局、バッキャオは発言を撤回した。

さて、そんなオーランド・クルスがWBO世界ライト級のチャンピオンに臨むことになり、ゲイのプロボクサーとして史上初の世界チャンピオンが生まれるかもしれないと注目されたのである。相手となる現在のチャンピオンはイギリスのテリー・フラナガン。彼は会見で自身の妹がレズビアンであることを述べ、オーランド・クルスの性に対し、理解と敬意を述べた。

そして11月末に試合は行われた。結果はテリー・フラナガンの8回TKO勝ちだった。

今回は残念だったがオーランド・クルスの今後の動向に注目していきたい。プエルトリコの同性婚の行方とともに。

2016.12.16

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp