同性カップル特有の別れる理由
久しぶりに友人の女性から連絡があり、一緒に酒を飲んだ。
「なんであんな人を好きになったのかわからない。前頭葉が麻痺してたのかな(恋愛している時は前頭葉が麻痺しているという説がある)…」
彼女は離婚したらしい。それについて意見を言ってはからまれ、意見を言わずに聞いているだけでもからまれた。
僕くらいの年代になると、周囲では恋人と別れたという話より離婚の話の方が多い。離婚届、子供がいる場合は親権やら養育費の問題など、結婚より離婚の方が大変と言われるだけあって裁判にまでなった友人もいる。それでも今よりいい人生が待っていると信じて離婚を選択する。
別れる理由も人それぞれである。性格の不一致もあれば、価値観のずれが重なっての結果ということもある。金銭、浮気、暴力など数え上げればキリがない。
2013年に東京ディズニーシー初の同性結婚式をあげた東小雪さん、増原裕子さんが「同性婚リアル」(ポプラ新書)の対談の中で、同性カップルが別れることについて触れている。基本的に別れる理由は異性カップルと変わらないが、レズビアンカップルに特有なのは、相手がバイセクシャルだった場合、
「あなたとは(法的に)結婚できないから」
「どうしても子供がほしい」
と言って去っていくそうだ。
親から結婚に対する圧力に耐えられず、泣く泣く別れ、望まない男性と結婚する方もいる。自分たちの人生なのだから、好きなパートナーと一緒に生きていくと決心しても現実は厳しい。特に石川県出身の東さんのように地方に住んでいる場合、結婚に対する風当たりは都会より強い。ゲイの男性と結婚して、今の彼女との関係も続けられるような友情結婚を真剣に考える人も一定数いるそうだ。
バイセクシャルである増原さんの場合、つきあっていた男性からプロポーズめいたことがあった時は迷ったと言っている。レズビアンとして生きていきたいと強い思いを持っていたとしても、失恋のタイミングで、やっぱり普通に男性と結婚して生きていく方が楽かもしれないという思いが現れ、その狭間で揺れるのである。思いを維持し続けることは難しいのである。
また、レズビアンカップルの場合、別れる際、同棲がネックになることもあるそうだ。ゲイカップルに比べ、相対的に経済力がないということから、交際を始めてから同棲するまでの期間が短いらしい。しかし、一端、同棲してしまうと別れた時が大変なのである。引越する費用も捻出できず、結局、別れた相手と一緒に住み続けなければいけないという話もあるそうだ。
ゲイカップルの同棲でもそういった話は聞く。別れたけれど引っ越すのが面倒で、そのまま住み続けているうちに友情結婚のように過ごしているという例もある。別れ方もいろいろである。
「同性婚のリアル」(ポプラ新書) 東小雪、増原裕子

イシコ
女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。
セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp