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化学的去勢する韓国、ポーランド、カルフォルニア…日本は?

化学的去勢する韓国、ポーランド、カルフォルニア…日本は?

幼児や子どもへの性犯罪者に抗男性ホルモン剤を投与し、性的欲求を抑制する薬物治療、つまり化学的去勢の刑罰がある。

テレビドラマのような話だが、実際、お隣「韓国」をはじめ、ポーランドやロシア、アメリカのカルフォルニア州では取り入れられている。日本は憲法に規定する残虐刑の禁止にあたるので現段階では行われていないが、議論にはあがっているらしい。

その話を聞き、アラン・チューリングが頭を過った。映画「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」で描かれたイギリスで活躍していた数学者である。彼は第二次世界大戦中、敵国ドイツの暗号を解読するために手腕を発揮し、解読するための機械まで開発した。

専門家の試算によれば彼の暗号解読の開発のおかげで、戦争は二年早く終結し、1400万人以上の命が救われたそうだ。戦没者やその家族にとっては空しい数字ではある。

終戦後、アランは国立の物理学研究所に勤めていたが、同性愛の罪、正式な罪名は風俗壊乱罪で逮捕される。そこで彼は選択を迫られる。刑務所に二年服役するかホルモン治療、つまり化学的去勢を受けるかのどちらか。アランは研究を続けたい一心でホルモン治療を選んだ。

当時、欧米では「性ホルモン剤」を打てば、同性愛が治ると思われていた。「ゲイに男性ホルモンを打てば、女性に興味をもつはず」、「女性ホルモンを打てば、男として性欲が衰退し、それに比例して男への興味も失うはず」。この二つの考え方が主流だったのだ。現在はWHOも国連も、この考え方を否定している。

アランがほどこされたのは後者だった。つまり女性ホルモンを打たれ続けたのである。映画では治療を始めて1年後に彼は自殺したとされているが、青酸カリの事故死だという説もあり、本当のことは、わからない。

イギリスは近代にいたるまで同性愛に関しての罪が厳しく、1885年~1967年の間に同性愛の罪で逮捕された人は49,000人に上ったそうだ。アランは、その中の一人として忘れ去られてしまった。

その一方で数学の世界やコンピューターの世界では彼の死後、功績が再評価され始め、様々な場所で取り上げられるようになった。しかし、イギリス政府は、なかなか認めることはなく、2009年ようやく政府として正式な謝罪を表明し、2013年エリザベス女王はアランを死後恩赦にした。

「あなたは普通じゃないから、この世はこんなに素晴らしい」

映画の中で、一番の理解者であり、一度は婚約したジョーンが、アランをはげます台詞が好きである。受け取り方は人によるだろうけれど。

「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才科学者の秘密」
2014年 イギリス・アメリカ 114分
監督 モルテン・ティルドゥム
出演 ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グッド他

2016.09.22

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp