子供だけじゃない。教師もLGBTに悩んでいるんです。
「元教師の高齢者は施設に入居すると嫌われやすい」と介護士から聞いたことがある。
職業に就いた時から「先生」と呼ばれ続けるため、自分の物差しが強くなりすぎ、他人の話を受け入れない傾向にあるのだそうだ。まぁ、職業に関わらず、高齢者にありがちなんだろうけど。
小さな町の教育委員に就任し、まもなく4年になる。本来、教師は多様性を受け入れる人たちでなければならないが、実際の現場は違うと感じることが多々あり、その度に介護士の話を思い出す。
教師のLGBTを考えさせてくれる映画に「イン&アウト」という作品がある。人気者の教師ハワードの教え子の俳優キャメロンがアカデミー賞を受賞したところから物語は始まる。キャメロンは生中継の受賞スピーチの中で恩師ハワードの名前を出して感謝を述べ、その後で、彼はゲイだと言ったのだ。
教師がゲイであると公表され、学校側も大騒ぎになり、町にマスコミが押し寄せる。ハワード本人はカミングアウトもしておらず、恋人のエミリーとの結婚も決まっていたのである。少々、ハチャメチャなコメディ作品だが、教師がLGBTであることで学校や地域住民はどう反応するかを考えさせてくれる作品である。
教育の現場のLGBTとして取り上げられる話は子供たちのことが中心になる。当然といえば当然なのだが、忘れてはならないのは教師の中にもLGBTで悩んでいる方はいらっしゃるということだ。
ある会議の席で、教師間でLGBTに関する研修や教育を始めてみてはどうかと提案したことがある。しかし、「基本的人権の中でまかなえる話だと思います」、「デリケートな問題なので触れない方がいいのでは…」、「今のところ、いませんから大丈夫だと思います」と返ってきた。
そこには、もし、教師がカミングアウトした場合、保護者からの反応、その後の子供たちの反応や指導環境への影響など、カミングアウト後の対応を考えると黙っていた方がいいという本音も見え隠れする。保護者、つまり世の中が受け入れる体制ができていないと難しいことは、いくら無知な僕でもわかるし、なにも僕はカミングアウトを勧めているわけではない。教師間でLGBTの社会に向けて備えてほしいだけである。
今後、子供たちからLGBTに対する質問や相談は、以前より多くなることは間違いない。教師が自分の言葉で自然に対応するには、多様性が建前ではなく、当たり前の思考になっていないと無理が生じる。子供たちは「建前」を敏感に見破る…なんてことは教師自身が一番わかっているはずなんだけどなぁ。
「イン&アウト」
1997年/アメリカ/90分
監督:フランク・オズ
出演:ケヴィン・クライン、ジョーン・キューザック、トム・セレック、マット・ディロン他
イシコ
女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。
セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp


