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聖職者に同性愛者の割合が高い理由 ~映画「バッド・エデュケーション」より~

聖職者に同性愛者の割合が高い理由 ~映画「バッド・エデュケーション」より~

ドミニカ共和国に滞在していた時、運転手を務めてくれたドミニカ人の男性は元神父だと言っていた。日本語が流暢なこともあり、いろいろ細かく聞いていると、正確には元神父ではなく、神父になろうと思っていた時期があるということだった。日本の神学校に留学していた時期もあるそうだ。だから日本語が流暢なのである。

「ボクハ セックスガ スキダッタカラ アキラメタンダヨ」

神父にならなかった理由を尋ねると、彼は、あっけらかんと答えてくれた。教会の聖職者は禁欲を誓うらしい。

映画「バッド・エデュケーション」は、神学校に通っていたペドロ・アルモドバル監督の半自伝的な作品である。映画監督エンリケのもとに、神学校時代の親友イグナシオを名乗る男が現れる。小さな劇団で舞台俳優をしていると言う彼は自らが書いた脚本をイグナシオに渡し、自分をキャスティングしてほしいと懇願する。その脚本には、二人の少年時代のことが描かれ、神父から悪戯されたイグナシオの話も触れられていた。

今年のアカデミー賞作品賞を受賞した映画「スポットライト 世紀のスクープ」もそうだったが、神父が子供に性的虐待する話は決して珍しい話ではない。
ロリータ・コンプレックスの延長なのかもしれないが、同性愛の延長の方が強いと思う。アメリカのウィスコンシン州の大司教が性的虐待した神学生に対する口止め料を司教区内の予算を流用して渡していたという話や大司教が教皇ヨハネ・パウロ二世によって教皇庁を追われた原因が同性愛の不品行だったという話もある。

そういったことが多いからかどうかはわからないが、欧米ではカトリック聖職者と同性愛者に関する研究がなされている。それによるとカトリック聖職者は一般の人よりも同性愛者の割合が多いという結果が出ているそうだ。アメリカのカトリック聖職者の1/3は同性愛者だという話さえある。

同性愛者が多い理由は想像がつく。僕がお世話になったドミニカ人のように女性との禁欲が耐えられず、教会を去って行く人も多いので、自然に異性愛者が減っていくことになる。そして、教会や神学校の中には男性しかいないといった同性愛者を育みやすい環境などを考察していくと高い数字も自然のように感じられる。

カトリック教会としての方針は、同性愛傾向は罪ではないが、道徳的には悪という考え方は根強く、1960年代には同性愛者を聖職に任じるべきではないという見解が発表されたという歴史もある。ただ、あくまで努力目標で、たとえ同性愛者であったとしても異性愛者と同様の禁欲と貞節を求めるにとどまっていた。

しかし、21世紀に入り、様々な事件が多いことをバチカンは重く受け止め、同性愛者の神学校への受け入れと任職を禁ずることを発表し、この方針を徹底するに至っているらしい。もちろん神学校に入ってから同性愛に目覚める人もいる。そうした場合、三年間の祈りと貞節を経ることで聖職者に着くことはできるが、性欲が激しい者は任職を禁じられるそうだ。ちなみに僕がお世話になったドミニカ人は結婚し、子供にも恵まれ、幸せな家族を築いている。

参考文献:Dr Elizabeth Stuart Roman Catholics and Homosexuality quoted by Kate Saunders in Catholics and Sex

「バッド・エデュケーション」
2004年/スペイン/105分
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルティネス他

2016.06.15

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イシコ

イシコ

女性ファッション誌編集長、WEBマガジン編集長を歴任。その後、ホワイトマンプロジェクトの代表として、国内外問わず50名近いメンバーが顔を白塗りにすることでさまざまなボーダーを取り払い、ショーや写真を使った表現活動を行い話題となる。一都市一週間、様々な場所に住んでみる旅プロジェクト「セカイサンポ」で世界一周した後、岐阜に移住し、現在、ヤギを飼いながら、様々なプロジェクトに従事している。著書に「世界一周ひとりメシ」、「世界一周ひとりメシin JAPAN」(供に幻冬舎文庫)。

セカイサンポ:www.sekaisanpo.jp